ネットワークエンジニアになろう! > HSRPを究める > HSRP を究める(10) Preempt

この記事は、改訂&リニューアルして『P はプロトコルのP - HSRP を究める』へ移転しました。

HSRP を究める(10) Preempt

Active Router がいなくなったり、プライオリティが下がると、それまでStandby Routerだったルータが、Active Router に変わります。

しかし、逆に、従来のActive Router が復活したり、プライオリティが高いルータが新たに接続されても、Active Router の切り替わりは発生しません。
つまり、Active Router の切り替わりは、Active Router が使用不可となるか、自分からActive Router であることを辞めない限り発生しません。

※ この動作は、Active Router の選定についてのみです。
Standby Router は、プライオリティの高いルータが出現すると、即座に切り替わります。
これまでの例では、説明を簡略化するために、Active Router も切り替わりが発生するものとして説明をしていました。
実際には、以下に説明する設定をしない限り、切り替わりません。

(復活したルータも含め)新たに出現したルータは、たとえプライオリティが高くても、Active Router にはなりません。
Active Router 以外のルータとの間でプライオリティを比較し、もっともプライオリティの高いルータが、Standby Router となります。


上図では、Router-A とRouter-C の間はGigabit Ethernet(1000Mbps)、Router-B との間はFast Ethernet(100Mbps) です。
Router-A がActive Router に戻らないと、左側PC から右側PC へのパケットは、Gigabit Ethernet のリンクを利用することができません。


そのような状況を回避し、プライオリティが高いルータが出現したら、Active Router の切り替わりを速やかに行う方法を、Preempt(プリエンプト)と呼びます。

※ Preempt の名詞形"Preemption" は、「先買い権」を意味する英単語です。

Preempt が設定してあると、新しく出現したルータが、自分のプライオリティがもっとも高いことを確認すると、Coup メッセージを送信して、Active Router になります。






















Standby Delay コマンド


Preempt を使用していないにもかかわらず、復帰したルータがActive Router になってしまう場合があります。
Layer3 スイッチ(Catalyst) のVLAN Interface で、HSRP とSpanning Tree Protocol を併用した場合に、そのような状況が発生しえます。

















上図では、Catalyst(Layer3 Switch)でHSRP を使用しています。
HSRP を使用するポートは、Routed Port ではなく、VLAN Interface(SVI:Switched Virtual Interface) です。

Catalyst-A が再起動したり、ポートのリンクがアップすると、Spanning Tree のPort State はBLOCKING → LISTENING → LEARNING と移行し、FORWARDING となるまで、最短で30秒を要します(デフォルト値を使用した場合)。

この間も、HSRP は動作しています。
ポートがFORWARDING となっていないので、Catalyst-A は、Catalyst-B からのHello メッセージを受け取れません。

Catalyst-A は、Active Router がいないと判断して、自分がActive Router になります。

standby delay minimum reload コマンドを使用すると、インターフェイスがアップしてから、HSRP が稼動を始めるまでの時間を調整することができます。



Catalyst-A(config-if)#
Catalyst-A(config-if)#standby delay ?
minimum Minimum delay
reload Delay after reload

Catalyst-A(config-if)#
Catalyst-A(config-if)#standby delay minimum 30 reload 120
Catalyst-A(config-if)#

minimum は、インターフェイスがアップしてから、HSRP が稼動し始めるまでに要する時間です。
reload は、Catalyst が再起動してから、HSRP が稼動し始めるまでに要する時間です。


HSRP を究める (1) はじめに
HSRP を究める (2) バーチャルルータ
HSRP を究める (3) バーチャルルターのアドレス
HSRP を究める (4) Hello の交換
HSRP を究める (5) HSRP のパケットフォーマット
HSRP を究める (6) HSRP メッセージの種類
HSRP を究める (7) HSRP のTimer
HSRP を究める (8) HSRP ステート(State)
HSRP を究める (9) Gratuitous ARP
HSRP を究める(10) Preempt
HSRP を究める(11) Standby Delay コマンド
HSRP を究める(12) Interface Tracking
HSRP を究める(13) BIA (Burnt In Address)
HSRP を究める(14) Authentication
HSRP を究める(15) ICMP Redirect
HSRP を究める(16) ICMP Redirect との協調動作

HSRP を究める - 実践編(1) HSRP を設定する前の状況を確認する
HSRP を究める - 実践編(2) Standby Group をつくる
HSRP を究める - 実践編(3) Active Router に障害を発生させてみる(1)
HSRP を究める - 実践編 (4) Preempt とプライオリティを設定する
HSRP を究める - 実践編 (5) Active Router に障害を発生させてみる(2)
HSRP を究める - 実践編 (6) Interface Tracking
HSRP を究める - 実践編 (7) Timer を変更する
HSRP を究める - 実践編 (8) Standby Group に参加するルータの認証
HSRP を究める - 実践編 (9) Standby Group を追加する
HSRP を究める - 実践編(10) Active Router に障害を発生させてみる(3)
HSRP を究める - 実践編(11) Standby Group に名前を付ける
HSRP を究める - 実践編(12) ICMP Redirect(1)Active Router
HSRP を究める - 実践編(13) ICMP Redirect(2)Passive Router
HSRP を究める - 実践編(14) ICMP Redirect(1)Unknown Router
HSRP を究める - 実践編(15) 設定用コマンド(1)
HSRP を究める - 実践編(16) 設定用コマンド(2)
HSRP を究める - 実践編(17) 設定用コマンド(3)
HSRP を究める - 実践編(18) 設定用コマンド(4)
HSRP を究める - 実践編(19) 設定用コマンド(5)
HSRP を究める - 実践編(20) show コマンド

HSRP を究める - 応用編(1) 複数のインターフェイスをトラッキングする(1)
HSRP を究める - 応用編(2) 複数のインターフェイスをトラッキングする(2)
HSRP を究める - 応用編(3) IP の経路情報 をトラッキングする(1)
HSRP を究める - 応用編(4) 異なる種類のObject をトラッキングする
HSRP を究める - 応用編(5) 特定のIP アドレスへの到達性をトラッキングする
HSRP を究める - 応用編(6) トラッキング対象のObject に重み付けをする
HSRP を究める - 応用編(7) HSRP version 2
HSRP を究める - 応用編(8) HSRP version 2 のパケットフォーマット
HSRP を究める - 応用編(9) HSRP version 2 (2)


ネットワークエンジニアになろう!のトップページへ戻る
サイト内検索
無料メールマガジン「英語でネットワークエンジニア」
マニュアルやRFCを読むのに必要なのは、高度な文法知識ではなく語彙力です。毎回一単語、例文と解説に技術情報を併せてお届けします. (マガジンID:0000181633)
メールアドレス:
Powered by
This website is powered by Movable Type 3.2 Smartnetworks.jp.