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この記事は、改訂&リニューアルして『P はプロトコルのP - HSRP を究める』へ移転しました。

HSRP を究める(15) ICMP Redirect との協調動作

IOS version 12.1(3)T から、HSRP とICMP Redirect を協調動作させるための仕組みが加わりました。

上図では、二台のルータのインターフェイスEthernet0/0 で、それぞれ二つのStandby Group が設定されています(Group 10 と20)。
Router-A は、Standby Group 10 のStandby Router、Group20 のActive Router になっています。
Router-B は、Standby Group 10 のActive Router、Group20 のStandby Router になっています。

先ほどと同様に、Router-B のEthernet1/0 でコストが増加されています。

左側のPC からの150.1.1.1 宛のパケットに対して、ICMP Redirect を返すのは先ほどと同様ですが、Redirect 先が、Router-A のReal IP アドレスではなく、Standby Group 20のVirtual IP アドレスになっています。

以後、左側のPC は、150.1.1.1 宛のパケットを、Standby Group 20 のActive Router に送ります。
なんらかの理由でRouter-A が使用不可となっても、Router-B がStandby Group 20のActive Router に切り替わることで、通信を継続できます。


この機能は、ルータに複数のStandby Group が設定されているときのみ、有効に働きます。

HSRP が設定されているルータは、自分に設定されているGroup だけでなく、サブネット上を流れるHello メッセージをすべて監視しています。
ICMP Redirect を送信する前に、Redirect 先がStandby Group に参加しているかどうか確認し、いずれかのGroup のActive Router となっていれば、Redirect 先をReal IP アドレスではなくVirtual IP に書き換えます。


Redirect 先のルータに、Active Router となっているGroup が無い場合(参加しているGroup がすべてStandby かListen)、Redirect は行われません。
Standby Group に参加していてActive Router になっていないルータを、Passive Router と呼びます。
Passive Router のReal IP アドレスへのRedirect は、冗長化されたルータを有効に活用できていないことになるので、禁止されています。




















上図では、Redirect 先のRouter-D がListen State なので、ICMP Redirect は送信せず、中継を続けています。

show standby redirect コマンドで、Redirect 先がPassive Router かどうかを確認できます。



Router#show standby redirect
Interface Redirects Unknown Adv Holddown
Ethernet0/0 enabled enabled 30 180

Active Hits Interface Group Virtual IP Virtual MAC
local 0 Ethernet0/0 10 192.168.1.1 0000.0c07.ac0a
local 0 Ethernet0/0 20 192.168.1.2 0000.0c07.ac14

Passive Hits Interface Expires in
192.168.1.102 0 Ethernet0/0 159.512

Router#


Redirect 先のルータにHSRP の設定が一切されていない場合、通常のICMP Redirect と同様に、Real IP をゲートウェイとするICMP Redirect を返信します。

no standby redirect unknown を設定すると、Redirect 先のルータにHSRP が設定されていない場合は、ICMP Redirect を送信せず、パケットの中継を続けさせることができます。





















State がListen となっているルータはHello メッセージを送信しないので、Active かStandby にならないかぎり、存在をほかのルータに知られることはありません。
他のルータに知られないままだと、Passive Router であるにもかかわらず、Redirect 先に指定されてしまいます。

Passive Router が、存在を他のルータへ通知するための手段として、IOS version 12.1(3)T から、Advertisement メッセージが導入されました。

Passive Router は、30秒に一回、自分が参加しているStandby Group の数と、State を含んだメッセージを送信します。
Advertisement メッセージを送信する間隔は、10〜180秒の間で変更できます。

Advertisement メッセージを180秒間受信しないと、そのルータは、HSRP が設定されていないルータになったと判断され、以後はRedirect の対象となります(Passive Router Hold Down Interval)。
Hold Down Interval は、30〜3600秒の間で変更できます。



Router(config-if)
Router(config-if)#standby redirect timers 30 180
Router(config-if)#






















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HSRP を究める - 応用編(7) HSRP version 2
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