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この記事は、改訂&リニューアルして『P はプロトコルのP - HSRP を究める』へ移転しました。

HSRP を究める (9) Gratuitous ARP

Active Router は、Virtual IP アドレス宛のパケットと、自分のインターフェイスに設定されたReal IP アドレス宛のパケットの両方を処理する必要があります。

Active Router は、Real IP アドレスを送信元とするパケットにも、Virtual MAC アドレスを送信元MAC アドレスとして使用します。

ルータが新たにActive Router になると、Real IP アドレスに関連付けられるMAC アドレスは、Real MAC アドレスからVirtual MAC アドレスに変わります。

反対に、これまでActive Router であったルータがActive を辞めると、Real IP に関連付けられるMAC アドレスはVirtual からReal MAC アドレスに変わります。

IP アドレスとMAC アドレスの関連付けが変わった事を、サブネット内の機器へ通知するために、ルータは、Gratuitous ARP(グラテュイタスARP)と呼ばれる特別なARP Reply パケットを送信します。

※ Gratuitous とは、「不必要な」「無意味な」といった意味の英単語です。

Active Router の切り替わり時に送信されるGratuitous ARP は、Sender IP とTarget IP がともにルータのReal IP アドレスとなっているARP Reply です。
自分宛のReply という、ARP 本来の目的からは外れた方法であることから、Gratuitous と呼ばれています。

※ Gratuitous ARP は、VRRP など、ほかのプロトコルでも利用されています。
文字通り「意味のない」ARP なので、共通の規則があるわけではなく、プロトコル毎に異なります。

下記の例は、Real IP が192.168.1.200 のルータが、Active Router になった時に送信するGratuitous ARP です。
Real IP アドレスとVirtual MAC アドレスの組み合わせで一回、ブロードキャストしています。
続けて、Virtual IP アドレスとVirtual MAC アドレスの組み合わせで二回、ブロードキャストとマルチキャストでARP Reply を送信しています。



*Feb 4 19:32:44.324: IP ARP: sent rep src 192.168.1.200 0000.0c07.ac0a,
dst 192.168.1.200 ffff.ffff.ffff Ethernet0/0
*Feb 4 19:32:44.324: IP ARP: sent rep src 192.168.1.1 0000.0c07.ac0a,
dst 192.168.1.1 ffff.ffff.ffff Ethernet0/0
*Feb 4 19:32:44.324: IP ARP: sent rep src 192.168.1.1 0000.0c07.ac0a,
dst 192.168.1.1 0100.0ccd.cdcd Ethernet0/0

※ 01-00-0c-cd-cd-cd は、Cisco でDummy Multicast と呼ばれているマルチキャストアドレスです。
Spanning Tree Protocol のUplinkFast でも、Uplink の切り替わり時に送信するマルチキャストパケットに用いられています。

上図では、Router-A がActive Router、Router-B がStandby Router となっています。

ここでRouter-A のPriority を85に下げます。

Router-A がStandby Router に変わり、Router-B がActive Router になります。
Router-A とB は、それぞれGratuitous ARP を送信します。
PC のARP キャッシュ上のエントリは、Router-B のReal IP(192.168.1.200) に関連付けるMAC アドレスをVirtual MAC アドレスへ、Router-A のReal IP(192.168.1.100) に関連付けるMAC アドレスをReal MAC アドレスへ変更します。


ルータの切り替わり時にGratuitous ARP が送信されないと、PC は、ARP キャッシュのエントリを適切に書き換えることができません。

上図では、Router-A がStandby Router になったにもかかわらず、PC からRouter-B のReal IP アドレス宛パケットの宛先MAC アドレスが、Virtual MAC アドレスになっています。
そのようなパケットは、Router-A に無視され、破棄されます。


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