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Late Collision - Ethernet におけるコリジョン検出のメカニズム

端末が、自分の送信したフレームがコリジョンに遭遇したことを認識するためには、そのフレームを送信している最中にコリジョンの発生を検出する必要があります。
フレームを構成する最後のビットを送信し終えた後にコリジョンが発生しても、送信した端末はそのコリジョンが自分のフレームにより発生した物かどうかを判断できないからです。

※ この記事の内容は、10Mbps のEthernet を前提にしています。Fast Ethernet(100Mbps) に適用するには、時間を10分の1にして下さい。

コリジョンドメインの一番端に存在する端末が送信したフレームが、最遠端まで届いた所でコリジョンに遭遇し、その事実が送信端末に認識されるまで、フレームは送信され続けていなければならないわけです。
これを満たすため、Ethernet の最小フレームサイズは64バイト(512ビット)に定められています。

フレームがコリジョンドメインの一番端から送信されて、最遠端から戻ってくるまでのビット時間(BT)を、最大伝播遅延(Maximum Propagation Delay)と呼び、Ethernet では、464 BT と定められています。
(464 BT = 46.4 ナノ秒は、1ビットが同軸ケーブルを約5キロメートル伝播されるのに要する時間です)

※ BT(Bit Time) は、1ビットの送信に要する時間です。

100ns = Ethernet
010ns = FastEthernet

自分が送信したフレームがコリジョンに遭遇したと認識すると、その事実をコリジョンドメイン内の全ての端末へ通知するため、Jam と呼ばれる信号(32ビット)を送信します。

最大伝播遅延と最大ジャム送信時間合計に16 BT を足した512 BT (= 51.2 マイクロ
秒)をラウンドトリップ時間と呼び、コリジョンドメインサイズの上限を規定しています。

464BT = Maximum Propagation Delay (最大伝播遅延)
032BT = Maximum Jam Time(最大ジャム送信時間)
016BT
------------------------------------------------------
512BT = ラウンドトリップ時間


最小フレームサイズ = 64バイト(512ビット) は、このラウンドトリップ時間から導き出された物です。
これにより、送信するフレームがコリジョンに遭遇した場合、そのフレームを送信し終わるまでに必ず検出できる事が保証されています。


チャネル獲得


端末がフレームを送信し始めて512 BT が経過するまでは、フレームがコリジョンドメイン内の隅々まで到達していない可能性があります。
フレームがまだ到達していない個所の端末は、LAN が空いているものと判断して、フレーム送信を開始できます。
そして、コリジョンが発生します。

フレームを送信し始めて512 BT が経過すると、LAN上にフレームが存在する事を全ての端末が認識しているので、他の端末によりフレーム送信が妨害されることはありません。
この512 BT をスロットタイムと呼びます。

スロットタイムの間コリジョンに遭遇せずにフレームを送信できた状態を、「チャネルを獲得した(Aquired)」と呼び、チャネル獲得の後は、コリジョンに遭遇せずに送信を完了できる事が保証されます。

ここまでの話は、LAN 上のすべての機器が、CSMA/CD の規則を遵守している場合です。

チャネルを獲得したにも関わらず(512 BT 経過後)、コリジョンが発生すると、Late Collision(レイトコリジョン)としてカウントされます。
その名の通り、「(スロットタイムが過ぎた後)遅れてやってきた」コリジョンというわけです。

Late Collision は、ラウンドトリップ時間が512 BT に収まっていない事を意味します。
ケーブル長が規定値に収まっていなかったり、途中のリピータやトランシーバの不具合で発生する事が多いです。


100メートルというUTP ケーブルの最大長は、ラウンドトリップ時間を元に割り出された物ではなく、電気信号の減衰率を元に定められたものです。
そのため、ケーブル長に起因するLate Collision は、UTP ケーブルの環境で発生することは稀です。
UTP ケーブルの環境でLate Collision が観測される場合、Duplex Mismatch が原因となることが多いです。

Duplex Mismatch については、Duplex Mismatch - Ethernet におけるDuplex 設定不一致の確認方法を参照して下さい。


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