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STP を究める 基礎編 (5)Bridge ID とRoot Bridge (ルートブリッジ)

これまでの例で見たように、Bridged-LAN 上には一台以上のブリッジが存在し得ます。

二台以上存在する場合、個々のブリッジを識別するためには、一意(ユニーク)な名前が必要です。
どのブリッジの名前も"Bridge" だと、どの機器を指しているのかわからないからです。

MAC 副層の上で動作するブリッジは、いわゆるLayer2 機器です。
Layer2 (Ethernet)には、MAC アドレスという、一意な名前(※)があります。
ブリッジの持つMAC アドレスを名前として利用すれば、ブリッジが何台あっても重複することなく一意に表現できます。



    IP アドレスと違い、MAC アドレスには位置情報が含まれていません。
    位置情報が含まれない識別子は、アドレスではなく名前です。
    つまり、MAC アドレスは厳密にはアドレスではないことになります。
    (IP アドレスには、ホストが所属するネットワーク(位置)を意味するネットワーク部があります)


STP (Spanning Tree Protocol) は、物理的にループ構成となっているBridged-LAN 上に、論理的なツリートポロジを構築するためのプロトコルです。

ツリートポロジとは、トポロジ上の任意の二点間を結ぶ経路が一つしか存在しないトポロジです。
具体的には、基点となるブリッジから枝葉を伸ばすようにノード(ブリッジ)を接続していきます。

基点となるブリッジを、Root Bridge (ルートブリッジ)と呼びます。
root は、根を意味する英単語です。
つまり、ツリートポロジの根となるブリッジです。



ルートブリッジはどのように選出されるのでしょうか。

一番簡単なのは、静的に設定してやる方法です。管理者により直接、Root Bridge であると設定してやれば、間違いはありません。

しかし、この方法には問題があります。
静的な設定は、ブリッジの故障や新しいブリッジの追加というイベントに、自動的に対応できません。
つまり、STP を究める 基礎編 (4)スパニングツリーの役割でお話した、b項に違反してしまいます。

ブリッジ同士で情報を交換し合って、Root Bridge を選出することが出来れば、イベントの発生を受けて、その時々に適切なブリッジがRoot Bridge になることが出来ます。

ブリッジ同士で交換する情報には、ブリッジの名前が格納されています。
この名前は、16進数で構成されるMAC アドレスです。

幸いMAC アドレスは16進数の数値です。数値であれば、ブリッジ同士で大小を比較し、最も小さいMAC アドレスを持つブリッジを、Root Bridge に選出することが可能です。


しかし、MAC アドレスを比較することにも問題があります。

MAC アドレスは機器固有のアドレスであり、通常は変更することが出来ません。
つまり、Bridged-LAN の構築に同じブリッジを使う限り、必ず決まったブリッジがRoot Bridge となってしまいます。

これは、「任意のトポロジを構成できること」を求めるd項に違反しています。

Root Bridge はツリートポロジの根となるブリッジです。
トラフィックのパターンにもよりますが、枝葉となるブリッジ間の通信の多くは、Root Bridge を通過します。

Bridged-LAN の外縁部 (端末が収容されている、ブロードキャストドメインの末端)のブリッジがRoot Bridge となると、トラフィックがそこに集中してしまいます。

MAC アドレスだけでRoot Bridge を選出するのは無理がありそうです。


STP を実装しているブリッジはそれぞれ、変更可能なBridge Priority (ブリッジプライオリティ)という値を持っています。

このBridge Priority にMAC アドレスを合わせた値を、Bridge ID (ブリッジID) と呼びます。
Root Bridge を選出するために比較されるのは、このBridge ID です。








Bridge Priority は、0 〜 65535 (10進数) の間で設定可能です。
IEEE 802.1D で推奨するデフォルト値は32768(16進数の0x8000) で、Cisco のCatalyst を含め多くの機器はこの値をデフォルト値にしています。

「Bridge Priority + MAC アドレス」という形をとるため、通常は、MAC アドレスの値に左右されることなく、設定されたBridge Proirty が最も小さいブリッジが、Root Bridge に選出されます。

初期値のまま使用するなど、Bridge Priority が同じブリッジが二台以上存在する場合、MAC アドレスが最も小さいブリッジがRoot Bridge となります。


















    STP を究める 基礎編 の内容は、特に明記しない限り、1998年版のIEEE 802.1D に基づいています。
    Bridge ID、Port ID、Path Cost 値など、IEEE 802.1T で行われた仕様の拡張は、2004年版のIEEE 802.1D に盛り込まれています。
    これらの拡張仕様については、応用編にて説明する予定です。


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