この記事は、改訂&リニューアルして『P はプロトコルのP - UDLD を究める』へ移転しました。
UDLD を究める(17)UDLD のテスト環境を構築する
UDLD の試験環境を構築するには、メディアコンバータを使ったり、Cisco 社員しか知りえない方法で行うなど、比較的敷居が高いのが実情です。
Catalyst6500 やCatalyst 4500 でサポートされているUnidirectional Ethernet 機能を利用すると、Catalyst をメディアコンバータの代用とする事が可能になります。
Unidirectional Ethernet 機能は、以下のIOS version からサポートされています。
- Catalyst6500 --- IOS version 12.2(18)SXE
Catalyst4500 --- IOS version 12.1(13)EW
Unidirectional Ethernet は、IOS version だけではなく、使用するラインカードの種類にも依存します。
詳細はCisco のウェブサイトで確認してください(Command Reference のunidirectioanl コマンドのページに書かれています)。
Catalyst をメディアコンバータの代用とすることには、以下のメリットが考えられます。
- Cisco 製品のみで検証を行う事が出来る
一度環境を構築してしまえば、遠隔操作で検証を行う事が出来る
CCO で公開されているIOS コマンドのみを用いて環境を構築できる
Unidirectional Ethernet
Unidirectional Ethernet は、Ethernet Switch を用いて放送型のアプリケーション専用のインフラを実現するための機能です。
通常のEthernet ではFrame は双方向に流れますが、接続される端末の実装が、フレームを受信するのみで送信する事が無い場合、スイッチと端末の間の光ケーブルのペアのうち、使われるのは一本のみとなります(例:スイッチ(TX) --> 端末(RX)) 。
音声データを受信・出力するスピーカ 、監視カメラからの画像を受信・表示し続けるモニター、制御機器からのデータを受信しつづける機器のように、データを送信し続ける、または受信し続けるだけの機器が想定されます。
(例:温度計、モータの回転速度計、地震計、電圧計)
Unidirectional Ethernet の設定は、1000BASE-X ポートでのみ設定可能で、「受信のみを行う(Receive-Only)」若しくは「送信のみを行う(Send-Only)」を選択します。
- interface GigabitEthernet3/1
switchport access vlan 10
switchport mode access
logging event link-status
speed nonegotiate
unidirectional receive-only
no cdp enable
interface GigabitEthernet3/4
switchport access vlan 10
switchport mode access
logging event link-status
speed nonegotiate
unidirectional send-only
no cdp enable
以下の例では、Catalyst-A のGigabitEthernet0/11(GBIC) とCatalyst-B のGigabitEthernet0/12(GBIC) の間でUDLD を使用する事を想定します。
メディアコンバータの代用には、Catalyst4503 を使っています。
(未確認ですが、おそらくCatalyst4900 でも可能でしょう)
@ 光ケーブルを次のように接続します。
- Catalyst-A (Gi0/11) のTX と、Catalyst4503(Gi3/3)のRX
Catalyst-A (Gi0/11) のRX と、Catalyst4503(Gi3/4)のTX
Catalyst-B (Gi0/11) のTX と、Catalyst4503(Gi3/1)のRX
Catalyst-B (Gi0/11) のRX と、Catalyst4503(Gi3/2)のTX
Catalyst4503 側はGigabit Ethernet が4ポート必要です。
各ポートのTX 若しくはRX のどちらかしか使用しないことに注意して下さい。
A Catalyst4503 でVLAN を次のように設定します。
- Gi3/1、Gi3/4 ----- VLAN 10
Gi3/2、Gi3/3 ----- VLAN 20
VLAN10、20 のSpanning Tree Protocol を無効にします。
CDP をDisable にします。
B Catalyst4503 の各ポートで、Unidirectional Ethernet を設定します。
- VLAN 10
- Gi3/1 Receive Only
Gi3/4 Send Only
- VLAN 20
- Gi3/2 Send Only
Gi3/3 Receive Only
Catalyst-A からCatalyst-B へ向けたフレームは、Catalyst4503 のVLAN20 (Gi3/3 --> Gi3/2) を通過します。
Catalyst-B からCatalyst-A へ向けたフレームは、Catalyst4503 のVLAN10 (Gi3/1 --> Gi3/4) を通過します。
※ Send-only に設定したポーtは、ケーブルを接続しなくてもリンクアップします(LED 緑点灯)。
ここまで完了すると、Catalyst-AとB の間でPing が可能になります。又、Spanning TreeProtocol のBPDU はCatalyst4503 を通過するようになります。
C Catalyst4503 で、次のようなMonitor Session (SPAN) を設定します。
Catalyst4503 では、CDP/UDLD/PAgP 等のプロトコルを無効にしても、受信したフレームを、CPU へ転送してしまいます。
このままでは、Catalyst-A、B の間のUDLD PDU は、Catalyst4503 に吸い上げられてしまい、Bidirectional になりません。
そこで、Catalyst4503 の各VLAN(10、20) で、Receive-only ポート で受信したフレームをSend-Only ポートへコピーするように、MonitorCatalyst4500 では、CDP/UDLD/PAgP 等のプロトコルをDisable にしても、それらのFrame を受信するとCPU へForward |
してしまいます。
このままでは、Catalyst-A/B 間のUDLD Frame はCatalyst4503 に吸い上げられてしまい、Bi-directional になりません。
そこで、Catalyst4503 の各VLAN (10、20) で、Receive-only ポート で受信したFrame をSend-Only ポートへコピーするように、Monitor Session (SPAN) を設定します。
- Monitor Session 1 (VLAN 10)
- Source Gi3/1 (Receive Only)
Destination Gi3/4 (Send Only)
- Monitor Session 2 (VLAN 20)
- Source Gi3/3 (Receive Only)
Destination Gi3/2 (Send Only)
このステップを完了すると、Catalyst-A とB の間で、UDLD のState がBidirectional になります。
これでCatalyst4503 の設定は完了です。
C Catalyst-A とB でUDLD の検証を行います。
Catalyst-A とB の間をUni-directional するには、Catalyst4503 のポートのうち、Receive-Only となっている物のどちらか一方をshutdown します。
Send-Only のポートをshutdown してはいけません。
Catalyst-A とB のポートががリンクダウンしてしまうので、UDLD の検証が出来ません。
※ UDLD の試験対象(この例では、Catalyst-A とB) のポートでは"speed nonegotiate" を設定し、Auto-Negotiation をDisable にして下さい。
UDLD を究める (1) はじめに
UDLD を究める (2)Bidirectional とUnidirectional
UDLD を究める (3)UDLD とAuto Negotiation
UDLD を究める (4)UDLD の基本動作
UDLD を究める (5)UDLD のパケットフォーマット
UDLD を究める (6)UDLD のタイマー
UDLD を究める (7)Bidirectional State
UDLD を究める (8)Operartional State
UDLD を究める (9)UDLD のアルゴリズム(1)ネイバー関係の確立
UDLD を究める(10)UDLD のアルゴリズム(2)Unidirectional を検知する
UDLD を究める(11)UDLD アグレッシブモード
UDLD を究める(12)UDLD ノーマルモードとアグレッシブモードの互換性
UDLD を究める(13)設定用コマンド
UDLD を究める(14)show コマンド
UDLD を究める(15)UDLD のデバッグ(1)ネイバー関係の確立
UDLD を究める(16)UDLD のデバッグ(2)Unidirectional を検知する
UDLD を究める(17)UDLD のテスト環境を構築する
UDLD を究める(付録) UDLD の状態遷移を時系列で観察する
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