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この記事は、改訂&リニューアルして『P はプロトコルのP - HSRP を究める』へ移転しました。

HSRP を究める - 応用編(5) 特定のIP アドレスへの到達性をトラッキングする

これまでは、インターフェイスや特定のIP 経路情報をトラッキングして、Active Router の切り替えを行ってきました。

経路情報を使って、特定のIP アドレスをトラッキングするには、そのIP アドレスのホストルートを受け取って、ルーティングテーブルへ載せる必要があります。

ルータのLoopback インターフェイスであれば、ホストルートでも問題ありません。
しかし、他のルータのインターフェイスに設定されている、全てのIP アドレスをホストルートで受け取るのは現実的ではありません。

ルータ全体が使用不可となる状況は、Loopback インターフェイスを監視することでトラッキング可能ですが、ルータの特定のインターフェイスに発生する障害を検出することはできません。

下図を見てください。
Router-C のインターフェイスEthernet0/1 は、インターネットへの出口となっています。

Router-C 自体は稼動していても、このインターフェイスが使用不可となると、Router-C を経由してインターネットへ接続することはできなくなります。

IOS version 12.3(14)T からサポートされている、IP SLA (Service Level Agreement) 機能を使うと、特定IP アドレスへのReachability をトラッキングできます。


本ページでは、Debug コマンドを使用します。
本ページの内容を実際に試される場合は、事前に「Debug コマンドについて」をお読みください。

まずは、Router-A でIP SLA を設定します。



Router-A#conf t
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Router-A(config)#ip sla monitor 1@
Router-A(config-sla-monitor)#type echo protocol ipIcmpEcho 192.168.4.102A
Router-A(config-sla-monitor-echo)#frequency 10B
Router-A(config-sla-monitor-echo)#timeout 1000C
Router-A(config-sla-monitor-echo)#exit
Router-A(config)#ip sla monitor schedule 1 life forever start-time nowD
Router-A(config)#

@ IP SLA 番号を指定します(1から2147483647の間で指定できます)。

A IP SLA の計測には、応答時間を見るEcho、ホップ毎の遅延のゆらぎを見るJitter など、数種類がありますが、今回は、Echo を利用します。
計測方法は、type に続けてecho と指定します。

IP SLA の計測には、HTTP、FTP、DNS、ICMP などさまざまプロトコルが使用できますが、、計測方法にEcho を使う場合はICMP のみ利用可能です。
プロトコルは、protocol に続けて、ipIcmpEcho と指定します。
ICMP の宛先に、Router-C のEthernet0/1(192.168.4.102) を指定します。

B ICMP Echo Request を送信する間隔を秒数で指定します。今回は、10秒にしました。

C Router-C からICMP Echo Reply が返ってこない場合のタイムアウト値を秒数で指定します。今回は、1秒にしました。

D IP SLA による計測を実施するスケジュールを、設定します。

先に作成したIP SLA 番号1 を、schedule に続けて指定します。

life で、計測開始から何秒間継続するかを指定します。今回は、管理者が停止させるまで継続しつづけるよう、forever を使います。

start-time で、計測を開始する時刻を指定します。今回は、即座に始めるよう、now を使います。

ここまで終わると、Router-A は、Router-C へ10秒間隔でPing を送信し始めます。

続けて、Router-A にObject Tracking を設定します。



Router-A(config)#track 1 rtr 1@
Router-A(config-track)#delay down 1 up 15A
Router-A(config-track)#exit
Router-A(config)#interface ethernet 0/0
Router-A(config-if)#standby 10 track 1B
Router-A(config-if)#

@ rtr で、先ほど設定したIP SLA 番号1 を割り当てます(Track 1)。
RTR はResponse Time Reporter の略です。

A Down Delay タイマー、Up Delay タイマーを設定します。

B Standby Group 10 のトラッキング対象を、Track 1 に設定します。


設定は以上です。

Router-A で、debug track を実行しておきます。

Debug コマンドについて」をお読みください。



Router-A#
Router-A#debug track
Router-A#


Router-C のインターフェイスEthernet0/1 をshutdown します。



Router-C(config)#interface e0/1
Router-C(config-if)#shutdown
Router-C(config-if)#
*Feb 11 17:55:37.467: %OSPF-5-ADJCHG: Process 1, Nbr 1.1.1.5 on Ethernet0/1 from FULL to DOWN, Neighbor Down: Interface down or detached
Router-C(config-if)#
*Feb 11 17:55:39.467: %LINK-5-CHANGED: Interface Ethernet0/1, changed state to administratively down
*Feb 11 17:55:40.467: %LINEPROTO-5-UPDOWN: Line protocol on Interface Ethernet0/1, changed state to down
Router-C(config-if)#

Router-C のEthernet0/1 がダウンしました。

Router-A のコンソールです。



Router-A#
*Feb 11 18:04:38.391: Track: 1 Down change delayed for 1 secs@
*Feb 11 18:04:39.391: Track: 1 Down change delay expiredA
*Feb 11 18:04:39.391: Track: 1 Change #4 rtr 1, state Up->DownB
Router-A#
*Feb 11 18:04:41.091: %HSRP-6-STATECHANGE: Ethernet0/0 Grp 10 state Active -> SpeakC
Router-A#
*Feb 11 18:04:51.091: %HSRP-6-STATECHANGE: Ethernet0/0 Grp 10 state Speak -> StandbyD
Router-A#

@ Router-C のEthernet0/1(192.168.4.102) からICMP Echo Reply が返ってこなくなったのを受けて、Down Delay タイマーを稼動させました。

A Down Delay タイマーが満了しました。

B Down Delay タイマーの満了を受けて、アラームを上げました。

C Track 1 からのアラームを受けて、Standby Group 10 のプライオリティを10下げ、State がActive からSpeak へ移行しました。

D State が、Speak からStandby へ移行しました。


対象はルータのインターフェイスだけに限りません。
特定のサーバを対象にトラッキングすることも可能です。


HSRP を究める (1) はじめに
HSRP を究める (2) バーチャルルータ
HSRP を究める (3) バーチャルルターのアドレス
HSRP を究める (4) Hello の交換
HSRP を究める (5) HSRP のパケットフォーマット
HSRP を究める (6) HSRP メッセージの種類
HSRP を究める (7) HSRP のTimer
HSRP を究める (8) HSRP ステート(State)
HSRP を究める (9) Gratuitous ARP
HSRP を究める(10) Preempt
HSRP を究める(11) Standby Delay コマンド
HSRP を究める(12) Interface Tracking
HSRP を究める(13) BIA (Burnt In Address)
HSRP を究める(14) Authentication
HSRP を究める(15) ICMP Redirect
HSRP を究める(16) ICMP Redirect との協調動作

HSRP を究める - 実践編(1) HSRP を設定する前の状況を確認する
HSRP を究める - 実践編(2) Standby Group をつくる
HSRP を究める - 実践編(3) Active Router に障害を発生させてみる(1)
HSRP を究める - 実践編 (4) Preempt とプライオリティを設定する
HSRP を究める - 実践編 (5) Active Router に障害を発生させてみる(2)
HSRP を究める - 実践編 (6) Interface Tracking
HSRP を究める - 実践編 (7) Timer を変更する
HSRP を究める - 実践編 (8) Standby Group に参加するルータの認証
HSRP を究める - 実践編 (9) Standby Group を追加する
HSRP を究める - 実践編(10) Active Router に障害を発生させてみる(3)
HSRP を究める - 実践編(11) Standby Group に名前を付ける
HSRP を究める - 実践編(12) ICMP Redirect(1)Active Router
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HSRP を究める - 実践編(14) ICMP Redirect(1)Unknown Router
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HSRP を究める - 応用編(1) 複数のインターフェイスをトラッキングする(1)
HSRP を究める - 応用編(2) 複数のインターフェイスをトラッキングする(2)
HSRP を究める - 応用編(3) IP の経路情報 をトラッキングする(1)
HSRP を究める - 応用編(4) 異なる種類のObject をトラッキングする
HSRP を究める - 応用編(5) 特定のIP アドレスへの到達性をトラッキングする
HSRP を究める - 応用編(6) トラッキング対象のObject に重み付けをする
HSRP を究める - 応用編(7) HSRP version 2
HSRP を究める - 応用編(8) HSRP version 2 のパケットフォーマット
HSRP を究める - 応用編(9) HSRP version 2 (2)


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